インドネシアでオフショア開発|メリットと失敗しない進め方
インドネシアへのオフショア開発は、時差2時間で日中の連携がしやすいのが強みです。メリット、よくある失敗の理由と防ぎ方、請負型とラボ型の選び方、依頼前の準備をまとめました。
「国内でエンジニアが採用できない」「見積もりが予算を大きく超える」「AIを使った新規事業を試したいが、社内に作り手がいない」。こうした理由から、海外の開発会社に依頼するオフショア開発を検討する日本企業は少なくありません。候補地として以前からベトナムやフィリピンが知られていますが、近年はインドネシアも選択肢に入るようになりました。
先に結論をお伝えします。インドネシアでのオフショア開発が向いているのは、次のような企業です。
- 日本の営業時間中に、開発チームとリアルタイムでやり取りしたい企業(時差はわずか2時間です)
- Webアプリ、モバイルアプリ、SaaS、AI機能などを、国内より抑えたコストで開発したい企業
- 仕様を文書で固め、毎週の成果物で進捗を確認する進め方を受け入れられる企業
逆に、「仕様はまだ頭の中にあって、細かいことは察してほしい」という進め方を前提にするなら、国内でも海外でもオフショア開発はうまくいきません。この記事では、インドネシアを選ぶ理由、オフショア開発がよく失敗する理由とその防ぎ方、そしてインドネシアのソフトウェア開発会社である当社 Rancangin Aja(PT Rancangin Aja Teknologi、以下 RAT)が海外のお客様とどう仕事を進めているかを、正直にご紹介します。
なぜインドネシアなのか
時差は2時間。1日のほとんどを同じ時間帯で働ける
ジャカルタを含むインドネシア西部時間(WIB)はUTC+7、日本はUTC+9です。時差は2時間で、どちらの国にもサマータイムがないため、一年を通じて変わりません。
たとえば日本時間の11時〜18時は、ジャカルタの9時〜16時にあたります。日本側の午前中に送った質問に、その日のうちに回答が返ってくる。夕方の定例ミーティングも無理のない時間に設定できる。欧米やインドへのオフショアと比べて、**「同じ日に、同じ時間帯で働ける」**ことは大きな利点です。
人口規模が大きく、開発者層も厚くなっている
インドネシアは世界第4位の人口を抱え、若い世代の比率が高い国です。スタートアップやデジタルサービスの成長とともに、Web・モバイル・クラウド分野のエンジニアも増え続けています。
開発の現場では英語が共通語
インドネシアの公用語はインドネシア語ですが、ソフトウェア開発の現場では、技術資料、ツール、コードのコメント、チケットの記述などに英語が日常的に使われています。日本側も英語で書かれた仕様書やチャットであれば、翻訳ツールを併用しながら正確に確認できます。
コスト構造が日本より低い
一般的に、インドネシアの人件費水準は日本より低く、同じ予算でより多くの開発工数を確保しやすくなります。ただし、コスト差だけを理由に選ぶのは危険です。仕様の確認や手戻りにかかる「見えないコスト」が膨らめば、差額はすぐに消えてしまいます。だからこそ、次に紹介する「失敗の理由」を先に知っておくことが重要です。
事前に知っておきたいこと: インドネシアには、ラマダン明けの大型連休(レバラン)など、日本とは異なる祝日・休暇があります。年間スケジュールを立てる段階で、両国の休日を共有しておくと安心です。
オフショア開発がうまくいかない5つの理由と防ぎ方
オフショア開発の失敗は、多くの場合「海外だから」ではなく「進め方」に原因があります。代表的な5つを、防ぎ方とあわせて整理します。
1. 仕様の認識ズレ
よくある状況: 発注側は「当然こう動く」と思っていた機能が、まったく違う形で納品される。日本の商習慣や業務フローの「暗黙の前提」が共有されていないことが原因です。
防ぎ方:
- 機能の一覧より先に、ユーザーの主要な操作の流れを1本、最初から最後まで文章で書く。
- 画面イメージ(ワイヤーフレーム)やクリックできる試作品を、コードを書く前に確認する。設計段階の変更は数分で済みますが、実装後の変更には数日かかります。
- 決定事項は口頭で済ませず、必ず文書に残す。
開発の各段階で発注側が何を準備すべきかは、ビジネスオーナーのためのSDLC解説で詳しく説明しています。
2. 進捗が見えない
よくある状況: 「順調です」という報告だけが続き、数か月後に初めて見た成果物が期待と違っていた。
防ぎ方: 1〜2週間単位の短いサイクル(スプリント)で開発し、毎週、実際に動くものをデモで確認する。報告書ではなく、触れる成果物で判断することが、最大のリスク対策です。
3. 品質が安定しない
よくある状況: 納品後に不具合が次々に見つかる。修正すると別の箇所が壊れる。
防ぎ方: 自動テスト、メンバー間のコードレビュー、ドキュメント作成を「オプション」ではなく標準の作業に含めているかを、契約前に確認します。あわせて、発注側の担当者が実際の業務シナリオで受け入れテスト(UAT)を行う時間も確保してください。
4. コミュニケーションが噛み合わない
よくある状況: ブリッジ担当者を何人も経由するうちに情報が変わる。質問への回答が数日遅れ、その間開発が止まる。
防ぎ方:
- 実際に手を動かすエンジニアと直接話せる体制を選ぶ。
- やり取りは非同期の文書コミュニケーションを基本にする。チャットやチケットに書かれた内容は、後から何度でも読み返せ、翻訳ツールで確認でき、言った・言わないの問題も起きません。
- 仕様変更が出たら、「対応できます」だけでなく「何日かかり、費用はいくら増えるか」を必ずセットで確認する。
5. 担当者が抜けて、ノウハウが消える
よくある状況: 主要メンバーが離脱し、後任が誰もシステムを理解していない。あるいは開発会社との関係が終わった途端、ソースコードもサーバーも手元に残っていないことに気づく。
防ぎ方:
- 設計書、構成図、デプロイ手順などのドキュメントを継続的に残す。
- ソースコードのリポジトリ、クラウド、ドメイン、アプリストアのアカウントは最初から発注企業の名義で作成し、管理者権限を持つ。
- 再委託の有無を確認する。誰が実際に開発しているのかが分からない体制は、責任の所在も曖昧になります。
開発会社を比較する際の質問項目は、ソフトウェア開発会社を選ぶための12のチェックリストにまとめています。当社を評価する際にも、ぜひそのまま使ってください。
RAT は海外のお客様とどう進めるか
ここからは当社の進め方です。誇張せず、実際に行っていることだけを書きます。
4つのステップで進める
- ヒアリング・相談: 業務上の課題、対象ユーザー、プロダクトの目的を理解します。初回の相談は無料です。
- 計画・設計: 技術選定、アーキテクチャ、ワイヤーフレーム、UI/UXデザインを固め、コードを書く前にご確認いただきます。
- 開発・テスト: 毎週のスプリントで進め、デモとドキュメントで進捗を共有します。マイルストーンごとに品質確認を行います。
- リリース・保守: 本番公開後も、監視、サポート、フィードバックに基づく改善を続けます。
当社の働き方の特徴
- エンジニアと直接話せる: 窓口担当を挟まず、実際に開発するメンバーとやり取りできます。
- 再委託しない: すべてのプロジェクトを自社チームで開発します。
- 保守しやすいコード: テスト、レビュー、ドキュメントは標準の作業です。
- リリース後も伴走: 一度納品して終わり、ではありません。
- リモートファースト: インドネシアを拠点に、タイムゾーンの異なる海外のお客様とリモートで仕事をしています。
言語と契約について
日々のコミュニケーションは英語で行い、仕様・議事録・決定事項は文書で残すことを基本にしています。当社には日本語を話すスタッフや日本の拠点はありません。その代わり、口頭のニュアンスに頼らない「書いて確認する」進め方を徹底しています。
契約形態、支払い条件、秘密保持契約(NDA)などは、プロジェクトの内容に合わせてご相談のうえ取り決めます。
対応できる領域
Web・モバイルアプリの受託開発(React、Next.js、Node.js、Flutter、Laravel など)、SaaS開発、UI/UXデザイン、クラウド構築(AWS、GCP、DigitalOcean)とCI/CD、そしてAI開発(LLMの組み込み、AIエージェント・チャットボット、社内文書を使ったRAG、業務自動化)です。AI開発のパートナーの選び方は、信頼できるAI開発パートナーの選び方で解説しています。
自社プロダクトという「実績の見せ方」
正直にお伝えすると、当社は若い会社で、日本企業との取引実績をまだお見せできる段階にはありません。その代わりに、実際に触っていただける自社プロダクトがあります。
AI動画クリップアプリの Cuplikin は、長い動画からAIが見どころとなる場面を見つけ、スコアや理由、タイトル案とともに提示し、ショート動画に仕上げるアプリです。Flutter の単一コードベースで、Mac、iPhone、iPad、Android に対応しています。最初のコミットから Mac App Store での公開まで約5週間でした。その過程はCuplikin 開発の記録で包み隠さず公開しています。受託開発でも、これと同じプロセスで進めます。
AI開発をオフショアで進めるときの注意点
AI開発は、通常のシステム開発以上に「作りながら確かめる」工程が多くなります。オフショアで進める場合は、特に次の3点を最初に合意しておくことをおすすめします。
- データの扱い: どのデータを使うか、どこに保管するか、外部のAIモデル提供元に何を送るかを、開発前に文書で決めておきます。
- 精度の測り方: 「賢いAI」ではなく、御社の実際の質問や業務データを使った評価セットで、回答の品質を定期的に確認します。
- AIが間違えたときの設計: 人に引き継ぐ流れや、AIに任せない範囲を、後付けではなく最初から設計します。
「100%正確なAI」を約束する開発会社には注意してください。誠実なパートナーは、できることと限界の両方を説明します。
請負型とラボ型、どちらを選ぶべきか
オフショア開発の契約形態は、大きく分けて2つです。
| 項目 | 請負型(固定スコープ) | ラボ型(時間・稼働ベース/専属チーム) |
|---|---|---|
| 費用の決まり方 | 事前に合意した範囲に対して固定額 | 稼働した時間・期間に応じて |
| 向いている案件 | 範囲が明確で小〜中規模、要件が固まっている | 要件が変わりうる、継続的に改善したい、新規事業 |
| 仕様変更 | 追加の見積もり・契約変更が必要 | 優先順位の入れ替えで柔軟に対応しやすい |
| 発注側の関与 | 要件定義と受け入れ時に集中 | 毎週の優先順位決めとデモ確認に継続的に参加 |
| 注意点 | 曖昧な範囲を固定額にすると、どちらかが必ず損をする | 稼働の透明な報告と、定期的なデモが不可欠 |
目安としては、「何を作るか」がはっきりしているなら請負型、「作りながら決めたい」ならラボ型です。まず請負型で最初のバージョン(MVP)を作り、リリース後の改善をラボ型に切り替える組み合わせも現実的です。最初のバージョンの範囲の決め方は、MVPと完成版の違いをご覧ください。
最初の打ち合わせの前に準備しておきたいこと
次の項目を事前にご用意いただくと、初回の打ち合わせが格段に具体的になります。完璧である必要はありません。
- 解決したい課題(機能の一覧ではなく、今どこで困っているか)
- 対象ユーザーと、そのITリテラシー
- 主要な操作の流れを1本(例: 顧客が申し込み、担当者が承認し、通知が届くまで)
- 既存のシステムや資料(既存アプリ、Excel、業務マニュアル、画面のスクリーンショット)
- 必須の機能と、後回しにできる機能の大まかな区別
- 予算の幅と希望時期(社内の決裁スケジュールも含めて)
- 英語でやり取りする窓口担当者と、意思決定者が誰か
- セキュリティや社内規程の制約(データの保管場所、NDA の要否など)
- AIを使う場合は、利用できるデータの種類と量
はじめの一歩は、小さな有償パイロットから
初めてのオフショア開発で、いきなり大型案件を発注する必要はありません。当社がおすすめするのは、**範囲を絞った有償のパイロット(PoC)**です。たとえば、1つの画面フロー、1つのAI機能の検証、既存システムの一部改修など、数週間で成果が確認できる範囲に限定します。
パイロットを通じて、成果物の品質、スピード、コミュニケーションのしやすさを実際に確かめられます。相性が良ければ本格開発へ、合わなければその時点で判断できる。発注側にとってリスクの小さい進め方です。
まとめ
- インドネシアは日本との時差が2時間で、同じ時間帯にリアルタイムで連携しやすい。
- オフショア開発の失敗の多くは、仕様の文書化、毎週のデモ、エンジニアとの直接対話、アカウントの発注側名義での管理で防げる。
- 範囲が明確なら請負型、変化が前提ならラボ型。まずは小さなパイロットから始めるのが安全。
インドネシアでのオフショア開発やAI開発をご検討中でしたら、お気軽にご相談ください。お問い合わせフォーム、メール(hello@rancanginaja.com)、または WhatsApp からご連絡いただけます。WhatsApp はインドネシアで最も広く使われているチャットアプリで、日本でいう LINE のような存在です。初回のご相談では、御社の課題に合った進め方と、パイロットの範囲をご提案します。
よくあるご質問
日本語でのやり取りは可能ですか?
当社には日本語を話すスタッフはいません。日々のやり取りは英語で行い、仕様・議事録・決定事項はすべて文書で残します。口頭のニュアンスに頼らず、書かれた内容を双方で確認する進め方です。
いきなり大きな案件を発注するのは不安です。小さく始められますか?
はい。まずは範囲を絞った有償のパイロット(PoC)から始めることをおすすめしています。数週間の実作業で、品質・スピード・コミュニケーションの相性を確認してから本格的な開発を判断できます。
ソースコードやアカウントの権利はどうなりますか?
原則として、支払い完了後にソースコードとリポジトリは発注企業のものになります。クラウドやストアのアカウントも最初から御社名義で作成します。詳細な条件は契約時にプロジェクトごとに取り決めます。
AI開発もオフショアで依頼できますか?
はい。LLMの組み込み、AIエージェントやチャットボット、社内文書を使ったRAG、業務の自動化に対応しています。当社は自社のAIプロダクトも開発・リリースしており、その経験を受託開発にも活かしています。